093522 ランダム
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目指せ!シナリオライター

目指せ!シナリオライター

恋は、大人になれない

○ 埼玉外国語大学・キャンパス(昼)
聞こえてくる日本語・英語・フランス語・中国語などの言葉。
校門前には、交流関係のある大学の国旗がはためいている。
国旗を見ながら母国を思い出している留学生。
真田 はるな(22)がアメリカ人留学生と話している。
その様子をみている雨宮 美幸(22)。
はるな「美幸。おはよう。」
美幸「おはよ。さすが帰国子女だね。私なんかこの大学入ってもいまだに話せないのに。でも英語教師なんてもったいないね。もっと自分が表だって語学生かせる仕事につけばいいのに。たとえば通訳とかさ。」
はるな「考えなかったわけでもないんだけど。」
美幸「あー。やはりあいつのためね。今時、ロマンチストだね。後悔しないの?」
はるな「うん。自分で決めたことだからさ。後悔しないために恋を選んだんだ。」

○ 同・テニスコート
  2対2の練習試合。
  スマッシュが決まる。
  悔しがるはるなと鹿島 忠(25)。
  はるな「また負けちゃった。」
  忠「おまえのせいだからな。いやだぜ。またケツバットかよ。中学生でもねーのに恥ずかしいぜ。この暑い中よ。」
  はるな「そう、人のせいばかりにして逃げてばかりいるから就職も決まらないんだよ。」
  忠「いいよな。決まったやつは、何だって言えてさ。」
  美幸「お暑い中悪いけど、時間よ。お尻向けなさい。」
  他の部員たちがひやかしている。

○ 忠のアパート
学生専用のアパート
いろいろな地方のナンバーの車が止まっている。

○ 同・中
脱ぎ捨てられたスーツや服のやま。
ビールの空き缶が転がっている。
テーブルの上に置き手紙がある。
{おかえり。自分の部屋は、自分で片付けようね。とりあえず、うちに来てた手紙おいとくよ。}
忠、封筒をあける。
中には、履歴書が入っている。
封筒ごと破り捨てる。
冷蔵庫からビールを取り出し飲む。

○ はるなのマンション
  七階建てのマンション
  子供たちがマンションの公園で遊んでいる。
  はるなは、子供たちに手をふり、微笑む。
  
○ 同・部屋
  小奇麗に整理されている部屋。
  二つ並んだ歯ブラシやマグカップなどがある。
はるな「うん。広島の学校受けたけど駄目だったんだ。埼玉の学校受かったからさ。ごめんね。広島帰れなくて。うん。うん。またね。」
  電話を切るはるな。
  ピンポーン
  美幸が尋ねてくる。
  二人で仲良く話す。
  はるな、トイレにたつ。
  美幸、あたりを見渡すと白い紙を見つける。
  
○ キャンパス・図書館
SPIを勉強している忠。
美幸「がんばってるね。少年よ。」
忠「少年って年じゃねーよ。」
美幸「じゃあ、とっちゃんボーヤかな?」
忠「でも、はるなだったら、勉強しても無駄とか言われそうだな。」
美幸「はるなさ、広島の高校に行くらしいよ。」
忠「えっ、こっちの学校受かったて言ってたけど・・・」
美幸「でも、私、昨日、はるなんちで見たんだよ。はるなの母校広島女子国際高校の採用通知」
忠「えっ、そ、そんな卒業したらまた一緒に暮らそうって言ってたのに」
美幸「恋愛は、そういうものじゃないよ。仲いいカップルだっていつ破局するかもわからない。硬いようで壊れやすいんだよ。人の気持ちって。別々に暮らそうって言ったのもはるななんでしょ?」
忠、図書館をかけていく。
ほかの学生が、うるさそうに忠を見ている。

○ 同・就職課
  中にはるなの姿がある。
  職員たちと楽しそうに話している。

○ 同・就職課前ベンチ
買ったばかりのタバコを吸いながら待ち続ける忠。
サークル仲間で話し込む学生たち。
ハングル語で話しかけてくる韓国人留学生。
忠「ノー、ノーアイム、ジャパニーズ」
韓国人留学生「オー、ごめんなさい」
  笑って立っているはるな。
はるな「相変わらずバカやってるね。私、待ってたんでしょ?」
忠「そんな暇じゃねーよ。」
忠、最後の一本のタバコを取り出す。
はるな「さっき、タバコ買うの見たもんね。落ちこぼれ君」
忠「・・・・。」
はるな、手に持っている封筒をバッグにしまう。
封筒の文字には[広島女子国際高校]と記されている。
忠「嘘つきやがって、女は、わからねー。勝手にしろ。」
はるな「何いきなり怒ってんの?私、何かした?」
忠「自分の胸に手をあてて聞いてみろ」
はるな、ただ立ち尽くす。

○ はるなの部屋(夜)
電話をかけるはるな。
「あのさ、今日サークルで何かあった?忠の奴。」
美幸の声「何にもないよ。どうして?」
はるな「なんか機嫌わるくてさ。あいつ、人前では、明るいけど、私の前ではいやな顔みせたりするからさ。」
美幸「就職のことで悩んでるんじゃない?元気付けてあげなよ。それか、はるながなにか余計な一言言ったんじゃない?」
はるな「あっ!」
美幸「なんか思いあたるふしあるんでしょ?明日謝りなさいよ。私は、眠いんだから寝かせてよね。」
はるな「ごめんね。おやすみ」

○ キャンパス(昼)
 スーツ姿の忠。
 汗をぬぐいながら歩いている。
 
○ テニスコート
 はるなと美幸のラリー。
 リズムよくつないでいる。
美幸「エイツ。」
はるな「あっ・・・」
 テニスボールが大きく開いたフェンスの穴から出て行った。

○ キャンパス内
 忠がよろめいている。
はるな「相変わらずドジね。」
忠「ドジとは、なんだ。ドジとは、ボールを人様にぶつけておいて」
美幸「ごめん。私が打ったんだ。まさかフェンスに穴が開いてるなんて思わなくて」
忠「美幸みたいにかわいらしく素直に謝れねーのか?ちっとは、女らしくしろ。」
美幸「怪我はない?大丈夫?」
はるな「いいの。こいつの痛みはすぐ和らぐから、ほれ足貸してみて」
 はるな、マッサージを始める。
忠「いてぇー」
はるな「騒がないで」
美幸「痛そう」
 はるな、足から手を離す。
 忠、マッサージをしているはるなの顔をみる。
 いつものはるなの顔だ。
忠「(なんか広島のことわけあるんだろうな)」
美幸、二人を交互にみる。
忠、立ち上がり歩いてみる。
忠「やはり、はるなのマッサージは効くな。サンキュー。昨日はごめんな。なんかいらいらしてて。」 
美幸「えっ、もう治ったの?」
はるな「ううん、私もわるかったね、忠の気持ち考えずに変なこと言って」
忠「変な事?なんか言ったけ?」
はるな「えっ?(もうわすれてるのかな?忠ならありえるけど)」

○ はるなの部屋
楽しそうに話すはるなと美幸。
二人で料理をする。
テレビを見る。
お風呂に入る。
二人、布団を並べて寝る。
はるな「美幸、起きてる?」
美幸「うん。起きてるよ。」
はるな「美幸と会ってもう四年かぁ。早いね。」
美幸「そうか、もうそんなに経つんだね。学校で迷子になってたはるなを体育館に一緒に連れてったんだよね。うちの大学狭いのによく迷ったよね。あんな方向音痴はじめてみたなぁ。」
はるな「もう、それは言わないでよ。昔から方向音痴なんだよね。一生治らないかも」
美幸「それもいえてるかもね。田舎育ちのせいかもね。」

○ キャンパス(夕方)
 学食のメニューを選んでいる忠。
美幸「たまには、自炊したら、毎日生姜焼きだと身体こわすよ。」
忠「うるせーな。俺は、家の中のごみをあまり出したくないから作らねーだけだよ。」
美幸「人がせっかく心配してあげてんのに。あっ、今日はるなんち来てよ。きのう二人で作ったカレーたくさんあまったんだ。私たちだけじゃ食べきれないからさ。」
忠「カレーか?たまにはいいな。よし行かせてもらうわ。食べれないんじゃ、仕方ないしな」」

○ はるなのアパート(夜)
美幸「はるな、昨日より気合が入ってるね。」
はるな「そんなことないよ。」
美幸「何言ってんの。照れちゃってさ」
カレーのほかにサラダなどの料理をつくりテーブルに並べる。
はるな「遅いな。忠」
○ 忠の部屋
 服を選ぶ忠。  
 髪をセットする。
 
○はるなの部屋
ピンポーン
はるな、ドアを開ける。
はるな「あっ。」
 美幸の彼氏、星野 雅樹(23)がたっている。
美幸「ダーリンに迎え頼んだんだ。はるな、トイレ借りるね」
 はるなと星野、ドアを開けたまま話している。
 冷たい風が腕を吹き抜ける。
 グーツ
星野「ごめん、ごめん、変なとこ見せちゃったな」
はるな、吹きだす。
はるな「ごめんなさい。笑ってしまって。あっ、カレーあるけど食べます?」
星野「いやぁー。はるなちゃんの手料理食べれるなんて最高だな。」
はるな「そんなこと、美幸に悪いですよ。」
ドアが閉まる。
階段から、忠が駆け下りていく。
 
○ 忠の部屋
忠、ビールをあけている。
空き缶をおもいっきり壁に投げつける。
無意味に大声をだす。
ベッドに飛び込み泣きじゃくる。

○ はるなの部屋
はるな「美幸、星野さんと付き合ってたんだ。すごい驚いた。」
美幸「そうでしょ。こいつプレイボーイで有名だからね。でも、今は前よりましになったかな?はるなも気をつけなよ。いつ口説いてくるかわからないからね。」
星野「それは、言いすぎだぞ。美幸。俺のイメージ壊れちゃうじゃんかよ。」
美幸「あんたのイメージは、もう壊れてるよ。」
はるな「仲がよくてうらやましいな」
はるな、時計を見る。
「(もう、十二時回ってる。どうしたんだろ?忠。何かあったのかな?)」
カレーは、ほとんどなくなっている。

○ 同・ベッドの上
はるな「うーん。あれっ、何で裸?」
隣に星野も裸で寝ている。
はるな「えっ、もしかして?ううん、絶対そんなことないよ。でも、記憶が曖昧。そんな尻軽女じゃない。」
星野「おはよう。はるなちゃん。」
はるな「きゃっ、あっち行って」
星野「何をいまさら。夕べあんなに楽しんだのに。変なはるなちゃん。」
はるな「そんなことしてません。うそ言わないでください。」
星野「自分でしたこともわからないの?一番タチ悪いね。俺は、どっちでもいいけどさ。充分楽しんだからさ。一番かわいそうなのは。追い出された美幸だよな。おれは、遊びだったからどうでもいいんだけどさ」
はるな「・・・」
星野、はるなを見て笑っている。
はるな「とにかく帰って」
星野「狼さんは、帰ります。ごちそうさん。赤頭巾ちゃん」
はるな、枕をドアに投げつける。
はるな、枕に顔をうずめ泣き出す。

○ キャンパス・学食
学食を食べている忠。
美幸「・・・おはよ。忠」
忠「珍しく元気ないな。美幸」
美幸「忠こそ」
二人、顔を下に向けている。
美幸「聞いても動揺しないでね。無理かもしれないけど。あたしの彼氏、はるなに取られちゃった。」
忠「えっ、あのプレイボーイ、お前の彼氏だったのか?遊ばれてたんじゃないのか?」
美幸「今、考えたらそうかも。私、彼に口説かれてついその気になって、調子にのってたかも。でも、何で知ってるの?」
忠「昨日、お前に呼ばれてはるなんちにいったらあいつが家の中に入っていったのを見たんだ。それで、寄らずに帰った。女ってわからなくなってきたよ。でも、どうしても信じたい気持ちもある。俺、今までの時間無駄にしたくないし。」」
美幸「でも、恋愛は違うよ。もっとタフにならないとね。」
忠「お前は、平気なのかよ。あいつの事」
奥の席に座っている星野を目で指す。
美幸「女は、強いのよ。どう?忠、私と遊んでみない?」
忠「えっ?」
美幸「ごめんね。すごいかわいい。純だね。真面目もいいけど、少し遊んだほうがいいよ。」
忠「でもな・・・」
美幸、星野に目で合図をする。
星野とその友人隣のテーブルに座りだす。
星野「俺さ、夕焼けテレビに行くことにしたよ。親父のコネではいれたんだけどさ」
友人A「女子アナやタレント食い放題じゃないか?いいな」
星野「そんなのエロ雑誌だけじゃねーのかな?本当だったらいいよな」
 友人B「お前、もうあの子食ったって本当かよ。テニス部のなんていったけ?」
 友人A「はるな」
 友人B「そう、はるなだ。はるな」
 星野、忠の方を見る。
 星野「それは、どうかな?彼氏の前でそんなこと話せないよな。俺も優しいしな。でも、勉強は、できねーし、テニスは、相も変わらずうまくならねーし、就職は、決まらないと来た。彼女が、悩むのもわかるぜ。」
 友人A「こいつが彼氏?」
 友人B「うそみてー」
忠、コップを持つ手に力が入る。
バシャー
星野「何しやがる。俺を誰だと思ってんだ?」
ほかの学生たちの視線が集まる。
星野「見るんじゃねーよ。てめーらもただじゃおかねーぞ。」
美幸「親の権力でカッコつけてんじゃないわよ。実力者や社長の息子かしらないけど。うぬぼれてんじゃないよ。誰もあんたなんか怖くないんだから。あんたのお父様が怖いだけだから。」
友人たち逃げ出す。
美幸「友達もこんな程度の友情なんだ。(キッと星野をにらみつけ)はるなを傷つけたら承知しないからね。私の無二の親友なんだから。」
忠、はるなを見つめている。
美幸「忠、ボケッとしてないでなにか言いなさいよ。彼女とられてだまってるの?そんなの男じゃないよ」
忠「・・・」
美幸「もう、だらしないいんだから、行くよ。忠。練習。練習」

○ テニスコート
  はるなを探す忠。
テニス部員・吉岡 智之(24)が近づいてくる。
吉岡「はるなちゃん、どうしたんだ?なんか連絡つかないらしいぞ。」
忠「えっ、そ、そうかな?変わった様子は今朝なかったけどな」
吉岡「どうせ、またケンカでもしたんじゃないのか?」
忠「ま、まあそんなとこかな?」
女子部員たちも集まっている。
女子部員「なんだ。安心したよ。みんな心配したんだから。つまらないことで大騒ぎしちゃったな」

○星野の家
高級マンション

○ 同・部屋
星野と美幸が抱き合っている。
星野「つくづく悪い女だな。お前も。友達をだまして。その上彼氏までとるなんてな。でも、そんないい男なのか?あいつ」
美幸「あんたには、わからないよ。でも、私も正直わかんない。本当にどこがいいんだろ?」
星野「でも、学食のときは、言いすぎだぜ。さすがにカチンときたぞ。」
美幸「思ってることをいっただけよ。実際、そうでしょ?でも、何ではるな、襲わなかったの?」
星野「お前がいるからさ、好きだぜ、美幸」
美幸「うそばっかり。気持ち悪い」
二人は、唇を重ねる。

○ はるなの家
忠、いつものようにドアをあけるが、しまっている。
インターホンをならすが応答がない。

一週間後
○ はるなの部屋の前
忠が倒れたように眠っている。
はるな、忠を起こす。
忠「はるなー。はるなー。心配したぞ。どこ行ってたんだ?」
はるな「ごめん、お父さん倒れて実家帰ってた。慌しくて時間取れなくてごめん。また、カレーの時も来なかったし何か電話しずらくて、あとこの件も」
広島女子国際高校の合格通知である。
はるな「断りに行ったの。でも、担任だった先生がいつでも待ってるっていってくれたんだ。」
忠「ごめん、はるな。おれさ、はるなの事誤解してた。その合格通知、前にチラリとみえたときさ、広島帰っちゃうんじゃないかと思った。俺、信じる力足りなかったごめん」
はるな「いいよ。紛らわしいもの持ってた私も悪いし。それに人を100%信じるのも考えものだよ。」
はるなと忠、キスをする。

○ 同・ベッドの上
忠、隣に寝ているはるなを見る。
無垢な赤子のような寝顔である。
忠「(本当に星野と寝たのかな?きっとデマだ。やっぱ一緒にいると落ち着くな。)」
-はるなが目を覚ます。
はるな「おはよう、忠」
忠「(ドキッ)・・・おはよう」

○ 居酒屋「シャラポワ」
二階建ての小さな居酒屋。
ガラッとドアを開ける、はるなと忠。
主人・藤野 満(27)がうれしそうに動き回っている。
藤野「おう、きたか。ケツバットカップル」
忠「先輩、その話ばかりですね。いつも」
藤野「お前には、それしか話すことねーもん」
はるな「先輩、お店開店おめでとうございます。」
藤野「おう、はるなちゃん、ありがとよ。少しは、コイツうまくなったかよ。」
はるな「まだまだですね」
藤野「やはりな。(忠を見る。)でもな、あきらめなければ、夢や希望は逃げないぞ。おれだって、ここまでこの店出すのにどんなに挫折したってやり直してきたんだ。がんばれよ。テニスも就職もな」
忠「痛いところつくな」

○同・階段
吉岡が階段を降りてくる
吉岡「何やってんだよ。二人とも。みんな待ってるぞ。」
二人、階段を上がる。
吉岡「先輩も早く料理だしてください。」
藤野「先輩にたいして無礼なやつだ」
吉岡「僕たちは、お客様ですよ。」
藤野「(怒りを抑えて)かしこまりました。」

○ 同・座敷
忠、部員たちから飲まされ、からかわれている。
忠、笑顔を絶やさずに楽しんでいる。
美幸「楽しそうだね。忠のやつ。やはり、はるなが帰ってきたおかげかな?それまで、本当に暗かったんだから。」
はるな「大丈夫かな?忠。またはかなければいいんだけど」
美幸「えっ、でもたのしそうじゃん。」
はるな「みんながいるあいだはね。」
美幸「・・・・・」

○忠のアパート
はるな、忠を介抱しながら上がる。

同・トイレ
はるな「大丈夫?無理するから。」
忠「うるせー。」
はるな「そんな格好でいわれても怖くないよ-だ。」

○ 星野のマンション
 星野「こんな手にひっかかる馬鹿なんかいねーよ。」
 美幸「あいつだったらやる可能性高いから、頼むよ。」
 星野「しょーがねーな。」
星野ケータイのメモリを押す。
○ 同・ベッドの上
電話の着信音に忠起こされる
はるなの寝言「忠。」
忠「はるな・・・」
はるなの電話が鳴り続ける。
「着信 星野 雅樹」
留守電を聞く。
「もしもし、雅樹だけど、今夜うちに泊まるんじゃなかったのか?」
忠、家を飛び出す。
忠の置手紙「しばらく就職が決まるまであいません。自分自身甘えが出てきてなかなか決まらないし、それまでいろいろ考えさせてほしい。お前のことも。」

○ マンションの前の公園
ブランコがキィーキィー動いている。
忠、公園を横切る。
美幸「忠、私、私、」
忠「美幸か?何してんだよ。こんなとこでさ。」
美幸、忠の胸に飛び込む。
美幸「忠、助けてよ。私、どうしたらいいかわからない。私を抱いてよ。あいつのこと忘れさせてよ。」
忠の脳裏をはるなのケータイの着信音がさえぎる。

○ 忠のアパート
ベッドに寝転がる二人・

○キャンパス・テニスコート
2対2の試合。
スマッシュ
忠が決める。
吉岡「ニューカップルの誕生だぜ。お前、美幸ちゃんと組んだがうまいんじゃないの?」
忠「偶然だろ?」
吉岡「でも、いつもより身体動いてたぞ。」
忠「うーん。でも、身体は動きやすかったな。」
吉岡「こっちのほうがあってると思うよ。お前、引っ張ってくれる女性のほうがいいんじゃない?」
はるなが、コートに入ってくる。
はるな「あれ、ケツバット、忠じゃないの」
美幸「私と組んだけど、楽勝だったよ。」
はるな「へー。」

○忠のアパート
忠手には、郵便物が握られている。
企業からの選考結果ばかり。
どれも履歴書と企業の挨拶が書かれている。
封筒ごと破り捨てる。
 自信のあった企業もことごとくおちている。
ビールを飲む忠。
はるなからの電話がなる。
はるな「がんばってる。?」
忠「まあ、なんとか・・・」
はるな「元気ないよ。明るく明るく」
忠「そんなことないよ。元気だよ。」
はるな「今の状況は、どうなの?」
忠「うん、ぼちぼちかな!」
はるな「はっきりしないのね。だから落ちるんだよ。」
忠「ひやかしの電話かけてくるなよ。俺は、暇じゃねーんだよ」
乱暴に電話を切る忠。

美幸からの電話がなる。
美幸「どうだった?」
忠「全滅だよ。涙もでないよ。」
美幸「辛いかもしれないけど、がんばろう。あきらめちゃ、そこで終わりだしね。」
忠「うん、ありがとう。」

卒業式直前
○ 忠の部屋
引越しの準備をしている忠。
はるなの家にある私物を取りにいく。

○ コンビ二
ジュースを飲みながら、はるなに電話をかける忠。
受話器の声「・・・現在つかわれておりません」
電話を切る忠。
慌てて、はるなの家に向かう。

○ はるなのマンション
ぶっきらぼうにドアを開ける。
中身は、もぬけの殻である。
郵便受けに白い一通の封筒が入っている。
博電堂からの内定通知である。
投函の日付がはるなに最後に電話した日である。
忠の私物が清掃業者により運び出されていく。
窓のところには、二人で新居にと考えていたところから近い高校の内定通知が置いてある。
管理人によって捨てられていく。

○ 忠の部屋
美幸が朝食を作っている。
美幸「はるなのところ行ってたの?」
忠「い、いやぁ、コンビにだよ。」
美幸「はるなね、もうとっくに実家へ帰ったの知ってた?」
忠「知ってたのか?何で俺に言わなかったんだ?」
美幸「やっぱり行ったんじゃない。うそが下手だわ。私物取りに行ったんでしょ?」
忠「・・・」
美幸「私よ。清掃業者頼んだの。はるなの匂い感じたくなかったから。これで、忠は、完全に私のものね。」
忠「お前たち、友達じゃなかったのかよ。」
美幸「忠が、はるなを好きになる前まではね。どんな手を使ってでも忠を奪いとりたかった。子供のころから私は、ほしいものは、みんな手にいれてきたから。」
忠「内定通知の事も?」
美幸「もちろん、知ってたわ。博電堂に入ったら。私といる時間短くなるし、それを知ったら私の前から消えそうな気がして。」
忠「星野の件も」
美幸「星野君とは、ただの遊び仲間よ。彼とたまに寝ることによって手伝ってもらってた訳。」
美幸「あなたの生活くらい私が面倒見るから。仕事は、アルバイトで十分だから。明日、引越しだから今日は、荷造りがんばろうね。」

早朝
○ 忠のアパート
隣で寝ている美幸に気づかれないように家を出る。

○ 東京駅
広島までの切符を買う。

○新幹線車内
忠「ごめん。ごめんよ。はるな。待っててくれ。」



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